ドイツにみる介護福祉の現状
ドイツにおいても高齢化が加速度的に進んでおり、介護施設と介護職員の不足、女性の社会進出、核家族化、介護者の高齢化などに伴う介護力の低下など、
介護をめぐる状況は日本の現状と類似する点が非常に多い。
現在ドイツでは要介護者が約165万人おり、そのうち約120万人が在宅で介護を受けている。
国民の8割が住み慣れた自宅での介護を望んでいる。
しかし、介護者の7割以上が女性であり、しかも高齢化しているという問題もある。
デイセンターやショートステイ施設の整備は遅れているが、4000余りのソーシャル・ステーションと呼ばれる訪問看護・介護派遣センターが整備されており、
在宅での看護・介護サービスが提供されている。
入所介護施設の総ベッド数は45万床、そのうち、わが国の特別養護老人ホームに相当する高齢者介護ホームのベッド数が約15万床であり、どの介護ホームも多くの待機者を抱えている。
介護施設の入所にかかる費用は全額自己負担である。
高額の費用を年金や蓄え、または家族が負担しているが賄いきれず、施設を利用している要介護者の8割が公的扶助(生活保護)の受給者であり、
旧東ドイツ地域ではその割合が10割に達している。
また在宅で提供されるサービスのうち、医療保険の給付対象外の看護・介護サービスは利用者負担となり、これを負担できないときも公的扶助を受けなければならない。
このため公的扶助より支出される介護費用がこの10年間に50億マルクから100億マルクへと倍増している。
こういった背景の中、1995年4月1日より在宅介護に公的介護保険の給付が始まった。
この介護保険制度導入時期の前後にドイツにおける介護の現状を実際に体験する貴重な機会を得たので、以下に紹介したい(なお、この海外研修は社会福祉振興・試験センターの「社会福祉士海外研修」の一環で行われたものである。
本文で使用する用語については、われわれが日常使用している言葉に変更してある。
施設介護サービスの現状

ドイツの介護施設への入所方法は、「ホーム法第四条」に規定されており、本人あるいは家族より入所の申請が行われ、判定は資料に基づいて家庭医が行う。
入所が決定すれば、ホームと直接契約を結んで入所することとなる。
ドイツの高齢者介護ホームのベッド数は約45万床、総人口に対する割合は0.56%であり、どこの介護ホームにも長期待機者がいる状態である。
オーバンドルフ高齢者介護ホームは、人口約一万人の小都市にあるカリタス経営の老人ホームに併設された小規模(定員42名)のホームである。
介護ホームの職員の配置は2.34人に一人であり、常勤者の労働時間は週38.5時間と規定されている。
75%、50%のパートタイム勤務もあり、これらの職員が4交代で働いている。
高齢者の介護に携わる専門職として、老人介護士という資格制度がある。
看護婦と同格の資格者とみられており、業務内容もほぼ同様である。
医療サービスについては、ホームからの提供はなく家庭医制になっており、各自の状態に応じて医師がベッドまで診察に訪れている。
気軽に本人と話をし、詳しい情報が必要なときは医師と施設の担当者とが話し合いを行っている。
症状が変化し対応の変更が必要となるときは医師が新たな指示をする。
治療が必要な場合は、医師の指示により通院・入院することとなる。
病院への搬送は患者輸送車が行う。
この費用は医師の処方に含まれている。
ドイツでは医薬分業であり、医師の処方を近隣の薬局が調合しホームまで届ける。
服薬管理のできない入所者については、各階の詰所の棚に薬品が保管され、有資格者(看護婦・老人介護士)が投薬する。
施設で提供される介護サービスの内容は、食事介助・おむつ交換・排泄誘導・入浴介助・清拭介助・衣類交換・身辺整理などである。
介護担当者とは別に清掃・営繕などの担当者がおり、ホーム内外は実に清潔で快適に整備されている。
一般的にドイツでは早朝から仕事がはじまり、ホームでも六時になると液勤者から日勤者への引継ぎが行われる。
日課は大まかに決められているが、入所者の状態に応じたサービスが適時行われている。
引継ぎ終了後、各居室内の洗面台にお湯をはり全身の清拭がはじまる。
入所者各自の援助の内容はさまざまであるが、まず清拭・おむつ交換・着替えが行われ、ベッドメイキングの後、朝食となる。
寝たきりでもベッドの上で全身の清拭が行われ、寝巻きから日常着に着替え、朝食の介助となる。
食事は各階のデイルームにテーブルが設置されており、そこに用意される。
身体状態によっては居室で摂取している人もいる。
時間は、朝食8時、昼食2時15分、夕食17時15分であり、14時にはケーキ・クッキーなどと飲物の軽食が用意される。
厨房から温熱のワゴン車で各階まで運ばれたものを小キッチンで各テーブルごとの食器に盛り分ける。
ベッド上や居室での介食者にもここで盛りつけを行う。
嚥下困難者にはムース状の食事が用意されるが、複数献立は用意されていない。
併設の老人ホーム入所者には一階にある食堂で同一の献立の食事が用意されており、また近隣の高齢者に対しても低額で食事が提供されている。
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