-
今、なぜ介護の仕事なのか
-
職業としての介護
-
ドイツにみる介護福祉の現状
-
二一世紀に向けての介護福祉の課題
-
高齢者福祉サービスと新ゴールドプラン
-
社会福祉の推進方向
-
社会福祉改革の経過
-
介護の仕事の原則
-
介護の定義
-
介護の局面
-
介護のとらえ方
-
高齢社会を支える介護職・介護技術の設備が急務
当サイトの更新情報をお届けします!フィードの購読はこちらから。
今、なぜ介護の仕事なのか
高齢社会の姿
高齢化社会あるいは高齢社会という言葉が一般に使われるようになってすでに20年ほどになる。
これは、出生数が減少し、平均寿命が上昇したことで、高齢者の割合が増加した結果であり、最近では少子高齢社会という言い方もよくされる。
平均寿命の上昇は、乳幼児期の死亡率が低下したこと、高齢者が長命になったことによる。
現在約14%である高齢者人口は、約40年後には30%近くにまで上昇すると推計されている。
このような社会は、歴史的には当然存在しなかったし、世界的にみてもわが国が最初であると言われている。
このことによって発生する問題点については、さまざまな角度から分析されているが、ここではまずライフサイクルという視点からこれをながめる。
戦後50年の歴史の中で起こった家族のライフサイクルの変化は、子ども数の減少、長寿化が最も顕著である。
また、晩婚化や子ども養育期間の短縮といった世間でよく話題となることはあまり大きな変化とはいえず、高齢者本人でみると定年後の期間の長期化や後期高齢期から始まる寡婦期間、介護者からみると老親扶養期間の長期化といった、高齢期に起こる変化の方が大きい。
では、現在高齢者はどのような生活をしているのか。
現在、要介護高齢者は約195万人(高齢者全体の2.5%)、施設等入所者は約105万人(6.2%)であるが、
高齢期間の長期化および後期高齢者の増加により、この実数および割合は今後さらに上昇することが容易に想像される。
ちなみに、後期高齢者とは、75歳以上の者のことであり、時にはオールド・オールドと呼ばれる。
当然、心身の障害や不自由も現れやすく、介護の必要な者も増えるし、その中身も重度になりやすい。
厚生省の推計によれば、寝たきり等の高齢者は、現在の約200万人から、30年後には約520万人へと、2.5倍以上増加する。
さらに、一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦世帯など、社会的介護と隣り合わせの生活をしている高齢者も多い。
このようなケースを、従来のように、家族や親族のみでは担いきれないということが明らかになっており、ここに、社会的介護すなわち介護の職業化が求められる最も大きな理由がある。
カテゴリー:介護の仕事
職業としての介護
社会福祉は、篤志家の努力によって発展してきた歴史があることから、介護の仕事も、収入を度外視した篤志家の「慈善事業」であるとか、「ボランティア活動」であるというイメージをもつ人がまだまだ少なくない。
しかし、介護の仕事は医療や教育の仕事と同じように、「慈善事業」や「ボランティア活動」ではなく、普通の職業である。
したがって、高い低いは別として一定の収入を得ることができるのはもちろんである。
たとえば、東京都や大阪府等の民間社会福祉施設では、都府県の職員、つまり公務員に準じた給与制度をとっており、各種社会保険制度等も整備されている。
他の職業と異なるのは、営利を目的としないことである。
民間の仕事であっても、営利を追及せず一定の収入が得られるのは、介護の仕事のほとんどが公費でまかなわれているからである。
しんどいが、やりがいのある仕事
介護の仕事の目的は、ハンディキャップをもった高齢者や障害者の生活と関わり合いながら、その人の尊厳を守り、その人らしい生活を援助することである。
人間的なかかわりであり、自分の仕事がそのまま相手に伝わり、はねかえってくる。
たとえば、寝たきりの状態だった人が、自分が援助することで車椅子に乗れるようになったり、歩けるようになったりする。
こうしたやりがいは、他の仕事ではなかなか得られない。
転職希望の会社員が多いのも、そういうやりがいや人間的なふれあいに魅力を感じるからであろう。
その反面、しんどさもあるし責任も重い。
入浴時に、お年寄りを抱きかかえるハードな仕事も多い。
親身に世話をしても、なかなかうちとけてもらえないこともある。
ちょっとした見過ごしが、重大な事故につながることもある。
したがって、
「他に職業がないから」
とか
「とりあえず就職しょう」
というような安易な気持ちでは、長続きしない。
介護の仕事の内容
介護の仕事は、人間の生活を支えるものであり、その具体的な内容は、人間の基本的な生活全般に及ぶ。
たとえば、
栄養のバランスがとれた献立を考え、調理する。
配膳し、食事を食べさせる。
入浴するために、衣服を脱がして、身体を洗う。
排泄を手伝う。
オムツを交換する。
掃除や洗濯をする。
高齢者や家族の相談に応じる。
身体の機能訓練をする。
健康管理や看護を行う。
実際には、これらの仕事のすべてを一人でするのではなく、栄養士、調理師(員)、寮母(父)、介助員、ホームヘルパー、指導員、埋学療法士、作業療法士、看護婦、保健婦等といった多くの専門職が共同で担っている。
多様な仕事の場面
介護の仕事の場面は、時代の変化とともに、年々広がりを見せている。
高齢者関係を例にあげると、大きくは次の四つのタイプに分類できる。
(1) 特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護力強化病院等のような、利用者が毎日生活を送る「入所型」タイプ。
(2) デイサービスセンターやデイケアセンター等のような、利用する人がそこに通う「適所型」タイプ。
(3) サービスを提供する人が利用者の自宅に出向く、ホームヘルプサービスや訪問看護ステーション等のような、いわば「派遣型」タイプ。
(4) さらに、最近では、この三つのいずれのタイプにも属さない「生活型」が登場している。たとえば高齢者や障害者が数人で生活する「グループホーム」である。
これらの複数の型を同一法人で運営しているところも多い。
介護職の勤務時間
二四時間サービスを提供する「入所型」の場合、そこで働く人は、二交替または三交替で勤務することになり、当然、夜勤もある。
会社勤めのように、日曜日や正月が休みというわけにもいかない。
とはいっても、替わりの日に、休みは保障されている。
適所型、派遣型および生活型では、一般的に夜勤はなく、昼間だけの勤務である。
ただし、ホームヘルプサービスでも、夜間や平日以外のサービスを提供するようになってきているので、入所型と同様の勤務体制が増えるのは間違いない。
カテゴリー:介護の仕事
ドイツにみる介護福祉の現状
ドイツにおいても高齢化が加速度的に進んでおり、介護施設と介護職員の不足、女性の社会進出、核家族化、介護者の高齢化などに伴う介護力の低下など、
介護をめぐる状況は日本の現状と類似する点が非常に多い。
現在ドイツでは要介護者が約165万人おり、そのうち約120万人が在宅で介護を受けている。
国民の8割が住み慣れた自宅での介護を望んでいる。
しかし、介護者の7割以上が女性であり、しかも高齢化しているという問題もある。
デイセンターやショートステイ施設の整備は遅れているが、4000余りのソーシャル・ステーションと呼ばれる訪問看護・介護派遣センターが整備されており、
在宅での看護・介護サービスが提供されている。
入所介護施設の総ベッド数は45万床、そのうち、わが国の特別養護老人ホームに相当する高齢者介護ホームのベッド数が約15万床であり、どの介護ホームも多くの待機者を抱えている。
介護施設の入所にかかる費用は全額自己負担である。
高額の費用を年金や蓄え、または家族が負担しているが賄いきれず、施設を利用している要介護者の8割が公的扶助(生活保護)の受給者であり、
旧東ドイツ地域ではその割合が10割に達している。
また在宅で提供されるサービスのうち、医療保険の給付対象外の看護・介護サービスは利用者負担となり、これを負担できないときも公的扶助を受けなければならない。
このため公的扶助より支出される介護費用がこの10年間に50億マルクから100億マルクへと倍増している。
こういった背景の中、1995年4月1日より在宅介護に公的介護保険の給付が始まった。
この介護保険制度導入時期の前後にドイツにおける介護の現状を実際に体験する貴重な機会を得たので、以下に紹介したい(なお、この海外研修は社会福祉振興・試験センターの「社会福祉士海外研修」の一環で行われたものである。
本文で使用する用語については、われわれが日常使用している言葉に変更してある。
施設介護サービスの現状

ドイツの介護施設への入所方法は、「ホーム法第四条」に規定されており、本人あるいは家族より入所の申請が行われ、判定は資料に基づいて家庭医が行う。
入所が決定すれば、ホームと直接契約を結んで入所することとなる。
ドイツの高齢者介護ホームのベッド数は約45万床、総人口に対する割合は0.56%であり、どこの介護ホームにも長期待機者がいる状態である。
オーバンドルフ高齢者介護ホームは、人口約一万人の小都市にあるカリタス経営の老人ホームに併設された小規模(定員42名)のホームである。
介護ホームの職員の配置は2.34人に一人であり、常勤者の労働時間は週38.5時間と規定されている。
75%、50%のパートタイム勤務もあり、これらの職員が4交代で働いている。
高齢者の介護に携わる専門職として、老人介護士という資格制度がある。
看護婦と同格の資格者とみられており、業務内容もほぼ同様である。
医療サービスについては、ホームからの提供はなく家庭医制になっており、各自の状態に応じて医師がベッドまで診察に訪れている。
気軽に本人と話をし、詳しい情報が必要なときは医師と施設の担当者とが話し合いを行っている。
症状が変化し対応の変更が必要となるときは医師が新たな指示をする。
治療が必要な場合は、医師の指示により通院・入院することとなる。
病院への搬送は患者輸送車が行う。
この費用は医師の処方に含まれている。
ドイツでは医薬分業であり、医師の処方を近隣の薬局が調合しホームまで届ける。
服薬管理のできない入所者については、各階の詰所の棚に薬品が保管され、有資格者(看護婦・老人介護士)が投薬する。
施設で提供される介護サービスの内容は、食事介助・おむつ交換・排泄誘導・入浴介助・清拭介助・衣類交換・身辺整理などである。
介護担当者とは別に清掃・営繕などの担当者がおり、ホーム内外は実に清潔で快適に整備されている。
一般的にドイツでは早朝から仕事がはじまり、ホームでも六時になると液勤者から日勤者への引継ぎが行われる。
日課は大まかに決められているが、入所者の状態に応じたサービスが適時行われている。
引継ぎ終了後、各居室内の洗面台にお湯をはり全身の清拭がはじまる。
入所者各自の援助の内容はさまざまであるが、まず清拭・おむつ交換・着替えが行われ、ベッドメイキングの後、朝食となる。
寝たきりでもベッドの上で全身の清拭が行われ、寝巻きから日常着に着替え、朝食の介助となる。
食事は各階のデイルームにテーブルが設置されており、そこに用意される。
身体状態によっては居室で摂取している人もいる。
時間は、朝食8時、昼食2時15分、夕食17時15分であり、14時にはケーキ・クッキーなどと飲物の軽食が用意される。
厨房から温熱のワゴン車で各階まで運ばれたものを小キッチンで各テーブルごとの食器に盛り分ける。
ベッド上や居室での介食者にもここで盛りつけを行う。
嚥下困難者にはムース状の食事が用意されるが、複数献立は用意されていない。
併設の老人ホーム入所者には一階にある食堂で同一の献立の食事が用意されており、また近隣の高齢者に対しても低額で食事が提供されている。
カテゴリー:介護の仕事
二一世紀に向けての介護福祉の課題
伝統的な介護観である在宅での家族介護は、現状を考えると今後大きく増加するとは考えられない。
また、現に家族介護を行っている家庭においても、住宅改造や介護用具等の経済的負担が大きくなっており、これに対する対応も必要である。
このように、ますます増加する要介護者対策としては、以下のような課題があると考えられる。
第一は、サービス量の確保である。
これは、施設介護、在宅介護、いずれにおいても当面量的不足があり、住民が選択できるほどの量的準備が必要である。
これには、当然それを具体的に担う「ヒト」の養成が必要となる。
新ゴールドプランでは、二一世紀に向けての必要な介護関連マンパワー数を積算しているが、これによると、
ホームヘルパー、寮母等介護職員、看護婦等看護職員、いずれも残る五年間の間に、三倍前後の人材を確保しなければならない。
第二は、サービスの質的水準の確保である。
これは、利用者により効果的で、信頼のおけるサービスを行うためのものである。
具体的には、サービスの自己点検・評価、同じく社会的にこれを行うこと、利用者による不服申し立て制度、人材養成課程の内容充実、および就職後の再教育・研修体制の充実などが含まれる。
第三は、社会的介護を運営するためのシステムの開発である。
大きくは、公的介護保険制度や、焦点を絞って効率的に給付する介護手当制度のような基本的な仕組みであり、
小さいところでは、サービスを効果的に運用するマネージメントシステムの開発ということになる。
第四は、生活環境の整備である。
これは、家族介護にも関係するもので、住宅等介護環境の整備、道路・建物等地域環境の整備など、要介護者の日々の暮らしに配慮したまちづくりなどが求められる。
第五は、要介護者や介護者家族の生活に対する地域住民の理解を求める社会的啓発である。
現代は、多くの人が要介護状態と隣り合わせで生きているし、すべての人が高齢者となる。
このようなことを自分自身の問題としてとらえ、社会的にも、個人的にも高齢社会に対応する準備をしておく必要がある。
カテゴリー:介護の仕事
高齢者福祉サービスと新ゴールドプラン
介護サービスの中心は、高齢者および障害者である。
とりわけ急激に増加する高齢者に対する介護サービスの充実は、喫緊の課題となっている。
介護サービスは一般に福祉領域を中心に語られがちであるが、非常にさまざまなサービスが存在していること、結果として、職場も多様となることがわかる。
このうち、21世紀に向けて特に必要となるものを中心に計画したのが平成元年12月に発表された「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」(ゴールドプラン)である。
ゴールドプランは、消費税導入の際の趣旨を踏まえ、高齢者の保健福祉の分野における公共サービスの基盤整備を進め、
在宅福祉、施設福祉等の事業について、今世紀中に実現を図るべき目標量を示したものである。
「10ヵ年」とは、具体的な実施年となる平成二年(1990年)から今世紀最終年である平成十一年(1999年)までの間という意味である。
また、「ゴールド」とは、これまで「シルバー」すなわち「銀」として扱っていた高齢者を、「金」のように大切に取り扱うということである。
ゴールドプランは、次の七項目で構成されている。
(1) 市町村における在宅福祉対策の緊急整備 − 在宅福祉推進10ヵ年事業
【在宅三本柱の大幅拡充】
・ホームヘルパーの充実
・ショートステイの充実
・デイサービスの充実
【在宅介護の支援体制の充実と環境整備】
・在宅介護支援センターの創設および充実
・在宅福祉サービスの実施主体の全市町村普及
・「住みよい福祉のまちづくり事業」の推進
(2) 「ねたきり老人ゼロ作戦」の展開
・機能訓練の充実
・脳卒中情報システムの整備
・健康教育等の充実
(3) 在宅福祉等充実のための「長寿社会福祉基金」の設置(700億円)
(4) 施設の緊急整備 − 施設対策推進10ヵ年事業
・特別養護老人ホームの整備
・老人保健施設の整備
・ケアハウスの整備
・過疎高齢者生活福祉センターの整備
(5) 高齢者の生きがい対策の推進
・「明るい長寿社会づくり推進機構」の設置
・「高齢者の生きがいと健康づくり推進モデル事業」の推進
(6) 長寿科学研究推進10ヵ年事業
・国立長寿科学研究センターの設置および研究を側面から支援する長寿科学振興財団(仮称)の設立
・長寿科学に関するプロジェクト研究の実施
・母子保健医療対策の充実についての検討
(7) 高齢者のための総合的な福祉施設の整備
このゴールドプランを実現するための対策が、老人福祉法および老人保健法での、都道府県高齢者保健福祉計画、市町村保健福祉計画の策定義務化である。
これによって、全国の自治体は、平成5年度中に計画を策定することとなった。
この計画は、ニーズ調査に基づいた市町村からの積み上げ方式(ボトムアップ方式)であり、最終的に集計すると、厚生省が当初設定したゴールドプランの数値との間にズレが生じた。
これを中間見直しとして修正したのが、平成七年度より実施されることとなった新ゴールドプラン(平成六年一二月)である。
新ゴールドプランでは、基本理念として、利用者本位・自立支援、普遍主義、総合的サービスの提供、地域主義という四つを新たに掲げている。
また、より効率的で国民誰もがスムーズに利用できる介護サービスの実現を図るという観点から、新しい介護システムの創設を含めた総合的な高齢者介護対策の検討を進めることが明示されている。
この一つが、公的介護保険制度の導入を検討した「新たな高齢者介護システムの構築をめざして」(厚生省高齢者介護対策本部 高齢者介護・自立支援システム研究会 平成六年一二月)である。
カテゴリー:介護の仕事
社会福祉の推進方向
社会福祉改革が意図した方向を、介護に関連させて整理すると、大きく以下の五点に集約することができる。
これらを計画的に推進していくというのが今日の課題である。
国中心の企画から市町村中心の企画へ
中央集権型あるいは中央管理型のサービス実施体制は、地域の個別事情を反映しにくいし、状況に応じた迅速で柔軟な対応がしにくい。
そこで、サービスの実施責任を、住民に最も近い自治体である市町村に原則的に委譲した。
このような方向を、一般に分権化と呼んでいる。
たとえば、老人ホームを利用する場合、町村では、かつては都道府県の福祉事務所で手続きをしていたが、町村役場で行うこととなった。
ただし、市の場合、もともと市の福祉事務所が行っており、市については大きな変化はない。
施設福祉から地域福祉へ
できるだけ家族での介護を優先し、家族での介護ができなくなって初めて施設を利用するという従来の方式は、家族に過重な負担を強いるだけでなく、施設利用者への偏見、ひいては施設そのものへの偏見を生む。
これを解消するため、中間的サービスとして在宅福祉サービスを積極的に導入し、施設福祉とのバランスを考えながら推進していくというのが地域福祉である。
当面は、圧倒的に不足しているホームヘルパー、デイサービス、ショートステイのいわゆる在宅福祉三本柱の充実が課題である。
選別的福祉から選択的福祉へ
行政による措置中心のサービスは、結局はサービスを行う側の都合が優先しやすく、時には利用者の青苗が十分反映されないことになる。
このような体制を選別的福祉と一般に呼んでいるが、これを利用者が主体的に選んでいく方向へと転換しようというのが選択的福祉である。
これを実現するためには、サービスメニューの多様化という質的充実と、サービス量そのものの確保が必要となる。
そのため、公的サービス以外にも、企業によるサービス、住民参加型のサービスなどが積極的に開発されている。
また、選択を保障するために、情報提供、公的介護保険制度、インフォームドコンセントなどの方法も検討されている。
点的サービスから総合的サービスへ
サービス利用者のニーズは多様であり、かつ複数が同時的に存在している。
従来は、住民が一つ一つのサービスと個別に契約を結ぶというやり方が多かったが(点的サービス)、問題が重度化、複雑化するにつれ、ニーズの全体状況を考え、サービスを調整しつつ供給する必要が生じてきた。
総合的なサービス体制である。
これらを行う方法として開発されてきているのが、ケアマネージメントあるいはケースマネージメントである。
ケアマネージメントは、ニーズ充足効率を高めるだけでなく、利用者の主体性を発揮できる方法として、選択の時代にふさわしい援助方法と考えられている。
老人福祉から老人保健医療福祉へ
生活は、机の上では分解し、分析することができる。
ニーズも同様である。
しかしながら、実際の生活は分解することはできず、ニーズは個人の生活の中に不可分割的に表れる。
援助する側中心の発想では、サービス供給者別の縦割構造になりやすいが、利用者中心の発想では関連するサービスが一体となって、ニーズ全体に対応する必要がある。
これは、生活の側でサービスを統合するということであり、あるいは連携による援助を行うということである。
保健、医療、福祉が個別に対応していた時代はすでに過去のものとなりつつあり、行政機構も次第に、少なくともこれらを統合した部局へと再編成されつつある。
カテゴリー:介護の仕事
社会福祉改革の経過
社会福祉は今日、改革第三期にある。
第三期に至る歩みと、各時期の特徴を整理すると、以下のようになる。
第一期は、高齢社会への加速度的な突入が明らかとなった昭和40年代後半から昭和50年代後半にかけての時期である。
この時期の特徴は、肥大化する中央政府対策および迫り来る高齢社会に円滑に移行するため、保健、医療、福祉等の個別領域を越えて、基本的な行財政構造を変革しようとするところにあった。
それを典型的に示すのが、臨時行政調査会による数次にわたる答申である。
福祉領域では、高齢社会への軟着陸、福祉元年、福祉見直しなどの言葉が繰り返し使用された時代である。
第二期は、昭和50年代後半から平成初期までの時代であり、第一期の改革内容を個別領域でより具体化することが求められた。
福祉領域では、この時期、社会福祉三審議会合同企画分科会による意見具申が出され、ノーマライゼーションを核とする福祉理念の転換、地域福祉あるいは分権化の推進、サービス実施体制の調整等の考え方が打ち出された。
また、「社会福祉士及び介護福祉士法」に代表される、人材確保の必要性が指摘されたのもこの時期である。
これらを法的に進めたのが、社会福祉関係八法の改正ということになる。
第三期は、平成初期以降今日に至るまでの時期であり、高齢者福祉、児童福祉等の個別領域で、第二期の提言を具体的に実現することが求められている。
高齢者福祉領域では、すでに、ゴールドプランに基づく地方高齢者保健福祉計画の策定と、その実施に向けての取り組みが開始されているし、
これに続いて、児童福祉領域ではエンゼルプラン、地方版エンゼルプラン、さらには障害者領域でもノーマライゼーション7ヶ年戦略(障害者プラン)が検討されている。
また、児童福祉領域を中心に起こっている出来事として、今日的ニーズに合わせた統廃合を含む施設の再編成もこの期の特徴である。
このような連続した流れとは別に、再度第一期に立ち戻ったような改革も一部ある。
カテゴリー:介護の仕事
介護の仕事の原則
介護は、食事や排せつ、衣服の着替え、身だしなみ等、人間の基本的生活の一部に関わる援助である。
要介護者にとっては、介護されることで生活が成り立っており、これを抜きに自分自身の生活を考えることはできない。
介護は、きわめて日常的でかつ一日たりとも欠かすことのできない行為なのである。
このような、人間にとって不可欠な行為を委ねられた身内以外の第三者が、介護を職業とする人である。
介護を職業とする人は、その職場が、施設であれ、在宅であれ、このような介護の仕事の特徴を認識しておかなければならない。
ところで、介護の仕事に従事する人たちが、活動の際に気をつけるべき原則が多くある。
これについては、多くの識者が、さまざまな角度から指摘しており、数え上げたらきりがない。
ここでは、これを大きく五点に集約して、その要点を整理しておく。
援助関係は少なくとも対等
介護を受ける人は、一般に弱い立場にある。
介護を必要としなかった頃の自分と比較して、自信を喪失してしまったり、介護を受けることで自尊心を失いつつある人もいる。
介護を受けることは、多くの人にとって決して快いできごとではなく、少なくとも当初は苦痛であることの方が多い。
社会福祉などの仕事に従事していると、介護を受ける人のこのような立場を忘れて、つい指導的な援助になったり、一方的な援助になったりすることがある。
援助関係は決してこのような上下的な関係であってはならず、少なくとも対等の関係でなければならない。
介護を受ける人をひとりの人間として尊重する態度が援助者には求められる。
主役は本人自身である
人間は、その人の歩んできた人生によって、人生観や生活観が異なる。
介護を要する人といえども、このことは同様であり、一人ひとりが別々の人生を歩んでいるし、これから歩む道も異なるべきである。
すなわち、一人ひとりが、それぞれの人生の主役であることを念頭におかなければならない。
また、介護者が効率を求めるあまり、要介護者の自立を損なうような援助になることもよくある。
介護は、介護者のためにあるのではなく、本人の生活を成り立たせるために存在する。
介護計画は、それぞれの人生という履歴書にふさわしいものでなければならない。
介護者が介護しやすいような計画および実践ではなく、要介護者のその人らしさをかもしだすような工夫が必要である。
そのためには、本人および家族の声をよく聞き、共同しての介護計画づくりが進められなければならない。
生活全体への気配りを
要介護者は、心身の不自由ゆえに、自分自身の生活の全体像が見えにくくなっていることもあるし、
新たな要求を遠慮してしまったり、変化に対しておっくうになっていることもある。
その結果、生活がますます萎縮し、QOL(生活の質=生きている喜びや充実感がある状況)が低下することになる。
介護者は、直接的な介護場面での援助を行うのみならず、それを通じて要介護者の生き生きとした生活を作るのが目標であるという自覚が必要である。
そのためには、地域社会との関係を含む、本人の生活の全体への気配りが必要である。
援助は一人でしているのではない
施設での介護に従事するものは、職員集団が明確であり、チームによる援助、あるいは職員間の役割分担と連携という発想に立ちやすい。
かたや、在宅での個別援助の場合、時には自分だけが援助者であるという錯覚に陥ることがある。
介護者が担当する時間は、要介護者の生活のごく一部分であり、その他の場面では、他の人々が関わっていることは想像に難くない。
たとえば、保健医療関係の人との接点は当然考えられるし、デイサービスやショートステイなど複数のサービスを利用していることもよくある。
それぞれの援助者がお互いに情報を交換し合い、情報を共有することで、新たなニーズや解決方法の発見につながることもあるし、総合的な計画を立てることが可能となる。
信頼関係が大前提
介護関係は、人間対人間の関係であり、それは単に技術的な問題だけでなく、精神・心理的な関わりでもある。
要介護者との信頼関係が崩れると、全く同じ行為でも逆の効果となることさえある。
介護者は、単に技術的な向上だけでなく、信頼される人間としての魅力を作り出す努力が必要である。
その大前提は、秘密保持ということであるが、このような極めて当たり前の原則だけでなく、言葉遣い、立ち振る舞い、視線、服装、態度など、援助専門職としての基本的な事柄が求められる。
カテゴリー:介護の仕事
介護の定義
家族が主として介護をしていた時代においては、介護の定義をする必要もなければ、その意味合いを明らかにする必要もなかった。
しかしながら、介護業務の職業化さらには専門職化が進むにつれ、その定義あるいは専門性の明確化が社会的に必要となってきた。
社会福祉関係の辞典に「介護」という言葉が登場し始めたのは、それほど古いことではない。
比較的最近発行されたもので、かつ入手が簡単ないくつかの辞事典で介護の定義をみると、次のようになっている。
「重度の心身障害者やねたきりの老人、病人など日常生活を営むうえで生ずる諸困難に対するサービスを介護・介助という。
社会福祉施設において寮母、介助員などが行うものと、在宅ケアと して家庭奉仕員など派遣事業が実施されている。」(本間真宏『現代社会福祉事典』全国社会福祉協議会、1988)。
「介助し、保護することをいう。介護は、成人の家庭人の誰もがその意志に基づいて行うことのできる活動であるが、職業として介護を行う集団もある。
福祉機関に働く寮母、介助員、ホームヘルパー、そして民間の家政婦等である。」(厚生省監修『老人保健福祉事典』中央法規出版、1992)。
「障害などにより日常生活を営むのに支障のある人に対して身辺の援助を行うことをいうが、看護、介助、お世話などと厳密には区別されることなく使われており、明確な定義はないといえる。」(神垣真澄『現代福祉学レキシコン』雄山閣出版、1993)。
「ひとりで動作できなかったり、日常生活に支障をきたしている人に提供するサービスで、具体 的には食事や排せつの世話、掃除、洗濯などからなる。
このサービスは、ホームヘルパーなどによって在宅のままで提供される場合と、寮母などが主体となって施設内で提供される場合がある。」(社会福祉実践理論学会編『社会福祉実践基本用語辞典』1993)。
また、直接介護を定義するものではないが、社会福祉士及び介護福祉士法においては、介護福祉士の業務として、
「専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、
並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと」
としている。
介護という行為は、有史以前より、人間が当たり前のように行ってきたものであり、名称独占でもなければ、ましてや業務独占でもない。
これらの専門的辞事典は、これが職業化されるあるいは専門性を社会的に認識させる段階での必要性から定義づけを試みているものである。
したがって、介護そのものを定義するというよりも、職業としての介護を明確に位置づけようとしている部分が多々見受けられる。
いずれにしても、現状では社会的に承認されるまでの共通した介護の定義はないといった方がよさそうである。
カテゴリー:介護の仕事
介護の局面
在宅介護サービスが求められている。
これは、家庭介護と施設介護をつなぐものであり、二律背反的であった両者の関係を、中間サービスとしての在宅介護サービスを位置づけることにより、連続的にとらえることができるようにさせた。
現状においては、介護は「在宅介護」「介護の担い手」「社会的介護」の三つの領域でとらえることができるが、
介護の仕事として位置づけられる部分は、在宅介護サービスと施設介護サービスとを合わせた社会的介護の中に含まれる。
ただし、この社会的介護の中には、ボランティア活動や、参加型互助グループなど、職業化や社会的費用化がされていないものも含まれている。
これはわが国に、世帯単位の福祉施設という発想が少ないことに起因している。
軽費老人ホームの一部や母子寮において、世帯単位の対応をすることが可能であるが、広義の福祉サービスとして、公営住宅等を活用したこの領域でのサービスも将来的には考えられる。
カテゴリー:介護の仕事
介護のとらえ方
介護福祉士資格が成立して以降、介護という言葉が、専門的な意味合いをもって語られることが多くなった。
しかしながら、この言葉自体は、元来、それほど専門的な内容をもつものではなく、主として高齢者や障害者・児など、心身に不自由がなければ多くの人が自分自身で行う身の回りのことを、誰かが世話をするということを意味していた。
したがってその中心的な担い手は、歴史的には家族であった。
介護とは、まず第一に家族によって行われるもの(家族介護)である。
家族介護は、原則として家庭において行われるもの(家庭介護)であり、在宅福祉サービスが未整備の時代においては、家族介護、家庭介護、在宅介護の三つの言葉は、ほぼ同義語であったといってよい。
第二に登場するのが、家族介護ができなくなった場合であり、家族に代わって、社会がこれを行うことになる。
原則として家族が行うべきであるという時代において、家族ができないということは、事実上在宅介護が困難であるということを意味する。
これに対応するのが、施設や病院に入所・入院させての介護(施設介護)である。
今日でも、一部に存在する「在宅か施設か」という二律背反的な時代の到来である。
介護における二律背反的な発想というのは、介護の担い手と介護の場とを一体的にとらえることにより起こる。
すなわち、在宅介護=家族、施設介護=職業という構図である。
この構図が崩れ始めるのは、在宅福祉という考え方の浸透と関係がある。
これは、介護の担い手と介護の場とを別々のものとしてとらえるということであり、また家族による介護を全面的にではなく、一部のみ肩代わりするということである。
新たな介護形態としての在宅介護サービスの出現である。
これは、在宅介護が家族介護のみではなく、要介護者の自宅において提供される社会的介護サービス(在宅介護サービス)をも含めて使われる時代の到来を意味する。
カテゴリー:介護の仕事
高齢社会を支える介護職・介護技術の設備が急務
現代社会の最も大きな課題の一つは、高齢社会にどう対応するかということである。
そこで問われているのが、「介護」という言葉をキーワードにした、援助理念(人間観)、問題把握、援助資源、援助方法である。
この背景には、援助される存在としての高齢者観が横たわっている。
世界に類をみないスピードで進展する高齢社会、その結果としての要援護高齢者の急増。
政府は、これを乗り切るために、ゴールドプランの策定を都道府県市町村に義務づけ、さらに公的介護保険導入の検討を急いでいる。
これは主として、ホームヘルパー、特別養護老人ホーム、老人保健施設などに代表される援助資源づくり、ケアマネージメント、ネットワークなどの援助体制およびその基盤づくりを意図するものである。
このような社会資源の質量ともの拡充には、当然のことながらそれを運営していく際に関わる人材が要請される。
その結果、「介護」の職業化が進んでいる。
ところで、前述のように、政策次元での高齢者問題の中心は、援助される存在としての高齢者への対応である。
しかしながら、実際の援助場面での高齢者は決してこのような存在ではなく、日々生活している人間である。
生活の利便性を求めるのみならず、全体としての豊かさを求めている。
介護の仕事は単なる技術ではなく、その人の生活づくりの支援である。
宋の時代の学者朱新仲が「人生五計説」という生き方を説いている。
生計、身計、家計、老計、死計の五計である。
死計とは、自分の死に向かってどう生きるかという生き方論である。
人生最後の計画が死計とは、やや奇をてらっている感もあるが、
「生き甲斐」中心で、操作概念のような、今日の高齢者福祉施策をみると、この指摘は非常に興味深い。
「死」がなじまないという人には、「四住期」という考え方がインド哲学の中にある。
学生期、家住期、林住期、遊行期である。
遊行期は、現世のしがらみから解放され、悠々と生きる時期である。
思想は共通している。
高齢期とは、まさに死に向かい生きる時期である。
究極の介護とは、死に向かう最後の生をいかに充実させるかであると考えている。
それに付き添うのが介護者である。
かつては親族がこれを行っていたが、今日、その一部が社会化され、職業として営まれることになった。
高齢社会の現実を考えるとこれは避けて通ることはできない。
介護を職業とする人は是非このことを忘れないでいただきたい。
介護の技術とは、最終的には高齢者に、死に向かって生きている、人生の集約期ともいうべき時期に、やすらぎを与えるものでなければならない。
人生の最期にこの人と出会えてよかった、この人の介護を受けてよかった。
このように思われる介護者になれたら、素晴らしい人生の援助者である。
カテゴリー:介護の仕事
