言語聴覚士に求められるもの
人を動物から隔てる最大の要素を「言語」とするならば、言語聴覚士の仕事は数あるリハビリテーション分野の中でもいちばん「人間的」な職業かもしれない。
にもかかわらず、30年という実績がありながらも国家資格として認められたのがもっとも遅いのは、
スペシャリストとして定型化するには、あまりに対象が広範囲にわたること、そして重層的な仕事であることも関係しているのかもしれない。
言葉によるコミュニケーションに障害がある人を相手にする専門職のため、相手を丸ごと人間として理解しようとするやさしさと洞察力、そして懐の深さと広さが求められることになる。
相手が言葉をうまく使えないだけでなく、こちらも言葉による説明が伝わらないのだから、言葉以外にもさまざまなアプローチができる萄配さと創意、そして忍耐強さも求められるのではないだろうか。
そして言うまでもないが、言語訓練は患者の生活全般にかかわるものなので、リハビリチームの医療スタッフだけでなく、患者を取り巻く家族や友人知人たちとも密接に連携し理解しあうことが大切だ。
言語障害の原因はさまざま。耳が聞こえない場合、声を出す器官に疾患がある場合、脳になんらかの異常があるため言葉を失ったり、意味をつかめなくなる場合などがあげられる。
言語聴覚士の仕事の特徴として、ひとつは隣接領域の専門家とチームを組んで患者のリハビリテーションに尽くすことがあり、
障害の原因によって協力する専門家が違ってくるので、協調性に欠ける人は残念ながら不向きといえる。
たとえば、脳血管障害などによる失語症の場合は、脳神経外科医や神経内科医をはじめ看護師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーらとリハビリテーションのためのチームを組むことになる。
そのなかではリーダーシップを発揮できることよりも、必要な場面で必要なスタッフとタッグを組める柔軟さと、自分の専門職としての発言をきっちりできる側面がないと、患者もチームもコントロール不能となってしまうだろう。
また、従来は主として病院が活動の場だったが、徐々に介護老人保健施設や介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に加えて、在宅医療サービスでの仕事も増える傾向に一部ではあるようだ。
人生のベテランである高齢者に対しては、専門家として指導をする以前に、敬意をもって接する態度が必要となるだろう。
言語聴覚士のカリキュラムが比較的、時間をかけて広範囲に学ぶよう工夫されているのも、幅広い知識と関心を養えるようにとの配慮が働いているためのようだ。
人生の半ばで言葉を失ったり、獲得が遅れている人たちをやさしく包みこんで理解し、ほかの分野の専門家と組んで、あらゆる方法で障害を克服するために、
自分自身がすぐれたコミュニケーション能力を維持していかなければならない。
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