言語聴覚士の主な仕事内容
心理的なケアが言語聴覚士が行う治療の入り口
形成外科で言語聴覚士が対象とするのは、先天性の口唇口蓋裂の乳幼児とお母さんです。
口唇裂は、うわくちびるが生まれつき裂けたように変形しているもの、口蓋裂は、うわあごが変形しているもので、言葉を産み出す発声発語器官の障害ですから、言語聴覚士がかかわらなければならない疾患のひとつです。
出生直後や生後1カ月ほどで、産院や小児科から紹介されて訪れるお母さんの気持ちはとにかく沈んでいますから、心理面のケアが、まずは大事な治療の入り口となります。
正しいスピーチの獲得の為に
訪れるお母さんの気持ちをやわらげるとともに、子どもと一緒にリラックスできるような雰囲気づくりが重要です。
初回面接では、まずはじめに、
口蓋裂はこれからの治療によって克服できる障害であることを話し、お母さんと一緒にお子さんの成長を援助していくという姿勢をはっきり示します。
また、口唇口蓋裂の治療は、外科的な手術をするほかに、たとえば、噛乳の指導、耳鼻疾患の治療や聴こえの管理、むし歯の管理や矯正治療など、
多くの問題が生じる可能性がありますから、カウンセリングをともなう面接時では、出生から成人にいたるまでの治療のながれを説明して、お母さんへの指導や援助を行います。
この心理面のケアや子どもの発声発語の治療は、初診から一貫して言語聴覚士のながれで行われます。
言語聴覚士は、患者さんや周囲の人たちに直接働きかけて、正常なスピーチの獲得を目指します。
そのために外科的な手術を、通常は1歳前後と3歳前後に2回行いますが、言葉の発達への働きかけは出生直後から行い、乳児期の言語管理や、成長期のこころの問題などにも深くかかわります。
口唇口蓋裂の治療
口唇口蓋裂の多岐にわたる問題には、多くの専門職とのチーム医療体制で対応します。
チームには言語聴覚士のほかに、外科手術をする医師をはじめ、小児科、耳鼻咽喉科、歯科、放射線科などの診療科、そして看護士、ソーシャルワーカー、臨床心理士、教師、保育士など療育担当者などの専門職がかかわります。
言語聴覚士はこれらのチーム医療の各専門職の調整役を担っています。
言語聴覚士の役割は、最終的に患者さんが正常なスピーチを獲得し、社会のなかで十分なコミュニケーションができるように援助をすることです。
たとえば、ひとりの子どもに対して、言語聴覚士は、その子どもの障害だけをみるのではなく、その障害がその子どもにとってどのような影響を与えているかという視点、
つまりその子どもの全体を見て、それぞれの専門性が有機的に生かされてくるような調整をすることになります。
ですから医師との信頼関係が十分できていなければなりません。
たとえば、初回の手術がおこなわれても言葉が不明瞭であるという場合、なぜ不明瞭なのかを評価し、口の中、つまり手術に問題があって不明瞭であると評価したときは、
言語聴覚士がきちんとそれを医師に伝え、必要ならば再手術を依頼することもあります。
外科医は、子どもの言語発達については専門外なのです。
口唇口蓋裂は、形成外科的な手術をしても外見上やスピーチ機能など、最終的には隠せない障害ですから、子供が、病気という大きな障壁を乗り越えて、元気に高校や大学に進学したという知らせを聞くと、それはとても嬉しいでしょう。
子どもは案外、自分の障害を乗り越えて成長していく強さを持ち合わせていますから。
子どもの発達の過程でのお母さんの関わりかたや、治療する人たちの関わりかたなど、一般的にみても、
子どもや障害のある人に対しては、どうしても指示的にすすめてしまう傾向があるような気がします。
臨床にかかわる仕事の場合はとくに、待つということがとても大事です。
それにはやはり相手の気持ちが理解できなければなりません。
言語聴覚士は、患者さんの生活全体を捉えて言語発達の障害をあつかう仕事ですから、
これから言語聴覚士を目指そうとする人たちにはぜひ、育児体験など自分たちのふつうの生活経験をとおして、それを仕事に役立ててほしいと思います。
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