義肢装具士の特殊な勤務形態
一般に医療職は、医療機関に身分を置き業務を行うが、義肢装具士の場合は、民間の義肢装具製作会社や障害者福祉センターなどの施設に所属し、会社が契約している病院や診療所に出向いて業務を行う者が大半である。
統計に示されるように、義肢装具士の有資格者は全国で約3000名あまりになるが、医療機関に所属する義肢装具士は、わずか50人ほど。
ほかの医療職と比べると際だって少なく、義肢装具士が特殊な業務形態をとる職種であることがよくわかるだろう。
ただしこのような業務形態でも、あくまで義肢装具士の業務は医師の指示のもとに行うことが法のもとに定められている。
だから病院の外にいながら、病院の医師や理学療法士、作業療法士などの関連する専門職種と連携し、患者や障害者の要望に耳を傾けながら義肢や装具を製作しなければならないが、やはり病院の外にいるということで、なかなか医療の中心にかかわりにくいという面は否定できない。
本来なら、義肢装具士が病院で、患者への適合、さらにそれをつけての訓練なども行われたほうが自然なのだろう。
しかし義肢装具士法でその業務が、従来医師・看護師などが行ってきたことを補うと位置づけられていることもあり、先に述べたような、ギプスやコルセットの採寸・採型などの一部業務は、医師・看護師によって優先的に行われているし、
義肢・装具をつけての訓練は理学療法士や作業療法士によって行われているという現実があるのだ。
ニ分化が進む義肢装具製作会社
義肢装具製作会社は全国で約400社あるが、社員10人以下という小規模な会社が大半を占める。
「モノ作り」が中心となる義肢装具士の仕事は基本的にはひとりですべての作業が可能であること、伝統的な職人の世界に見られるように、
資格化によって教育制度が整備されるまでは、先輩のいる製作所で仕事を覚え独立開業をすることが一人前の義肢装具士になるための道とされてきたことが、小規模な会社が多い理由のひとつとなっている。
現在も義肢装具製作会社は、親子や兄弟によって経営される家内制手工業的な企業が多い。
独立開業をめざす流れにいまでも大きな変化はないが、それでも義肢装具製作会社のあり方自体は以前とは少しずつ変わってきている。
たとえば、従来は、採寸から製作、適合までを一連の流れとしてひとりあるいはひとつの会社ですべてを行っていたが、最近では採寸・採型、適合を中心とした会社と、製作のみを行う会社とに二分化しつつある。
数百種類におよぶ義肢・装具は、多くの部品からできているが、一から製作していては効率も悪いし採算性も上がらない。
そこで部品作りやある程度の組立・加工をする会社と、部品や加工品を仕入れ、オーダーにあわせて仕上げていくソフト面を重視する会社とに仕事の流れが分かれてきているのである。
医療・福祉の分野以外でも技術を生かしたモノ作りに取り組む
また、義肢装具製作会社が医療・福祉に足場を置いていることに変わりはないが、いままで以上に、広くダイレクトに一般社会あるいは消費者に目を向けるようになってきたことで、
従来の義肢・装具という概念を超え臨床医学や義肢装具工学などの技術を生かしたモノ作りに取り組む企業も増えている。
なかでも高齢社会をキーワードに、高齢者の日常生活を助ける福祉機器や器具の開発・製作を手がけるところが多くなっていることはひとつの特徴で、
みなさんもよく知っている車椅子は、いまでは義肢装具製作会社の主要な商品のひとつとなっている。
また、先に紹介したくつがた靴型装具に関しては、義肢装具士ならではの機能性に加えおしゃれさを兼ね備えたオーダーメイド靴として、その製作と販売に力を入れるところも増えてきた。
このように義肢装具士の仕事は、たんに患者・障害者のために義足や義手を作ることから、広く社会に暮らす人びとの生活をサポートし豊かにするための技術を提供する職業となりつつある。
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